70年代後半にはすでにこのお話の源となった「歌」ができていたのですが、そのまま放置していました。
きょうから少しずつアップしていきます(不定期連載です)
「お話」なのでもちろん全てが架空の世界です。
どこかで聞いたような名称が出てきたらニヤリとしてもかまいませんが、それ以上の追及はしても無駄です(笑)


主な登場人物
マーク…スコットランドの血を引くギタリスト。この物語の主人公。野外のステージで雷に撃たれたマークはその時抱えていたギターが身体から離れなくなってしまった。ギターを身体から離すためにギターを演奏しながら世界中を旅して回ることになった。
ジョウ…イタリア系の陽気なドラマー。美しければ女でも男でもOKのアブナイやつ。
ユウキ…東洋系の寡黙なベーシスト。小柄な美少年。だが、一定の酒量を越えると…。
リリー…イギリス生まれの日本人。ひょんなことからツアーの同行記者になる。

1.
「くっそう、どうすりゃいいんだ?!」
ロンドンのとあるホテルの一室。
マークはベッドの上で柔らかにカールした肩まで届くブロンドの髪の毛を掻きむしりながら一人叫んだ。
ワイト島での屋外フェスに参加できると喜んでロンドンまでやって来たものの、ラストに奏(や)ろうと考えている曲のギターソロによいフレーズがちっとも浮かんでこないのだ。

「あさってには本番だぜ~~っ!」
マークはうめいて枕に顔をうずめた。
そして
「ジミのように衝撃的なデビューを飾りたいよーー。」
と、その枕に訴えた。
そのとき、部屋のドアがノックされた。
「カムイン、ど~ぞ~。」
枕に顔をくっつけたままマークが気のない返事をするかしないかのうちにドアが開く音がした。

「お荷物を持ってまいりました。」
なんだ、ボーイか。
「あ~、その辺に置いといてくれ。チップはテーブルの上の小銭を持っていっていいぜ。」
「大事なギターを…。よろしいんですか?」
「へ?」
マークは枕から顔を上げて部屋を見回した。だが、もう誰もいなかった。
部屋の隅には見覚えのあるオンボロのトランクと「見覚えのない」りっぱなギターケースが置かれていた。

 

2.
「なんだ?ボーイのやつ、間違えやがって。チップをやるんじゃなかった。」
そう文句を言いながらもマークはそのギターケースを開けてみた。
「うほ。レスポールじゃないか。ナンバー2か?うん、スイッチの感じがちょっと違うな。そして見ろよこのシャンパンゴールドに輝くボディをよ。こいつはスゲーや。…ちょっくら弾いてみてもいいよな。間違えたのはオレじゃなくてボーイだし。」
ぶつぶつと独り言を言いながらマークはケースからギターを取り出すと、軽くチューニングを確めた。
そのとき、レスポールがきらりと光ったように思ったが、マークの指はすでにローズウッドの指盤の上を流れるように動き始めていた。
錯覚だろうが、頭に浮かぶ音が同時にギターから出ているような感じがする。
「グッボーイ。やるな、オマエ。」

そうだ。マークのギターと間違われた相手は今ごろ怒っているだろうな。
『私のギターはこんな安物ではない!はやく取り替えて来てくれ』ってね。

「待っていればすぐにさっきのボーイが交換しに来るさ。それまでの間、もうちょっとだけ弾いても構わないよな。」
マークは軽い気持ちでレスポールをギターケースにしまうと練習スタジオへと向かった。

スタジオにはドラムスのジョウとベースのユウヤがすでに来ていた。
だが、マークがレスポールを取り出してもさほど驚く様子もなかった。
あとで聞いたら、まったく気がつかなかったそうだ。
なんていうやつらなんだ?

まぁ、いいさ。
マークはそんなことが気にならないほどよい気分だったのだ。

ホテルの前のパブで一杯飲(や)ったあと、フロントへ行って自分にメッセージがないか訊いた。
当然ギターの持ち主から連絡が来ているだろう。
スタジオへ持っていったことをなんて言い訳しようか?

だが、何もなかった。
マークはあまり嬉しくない自分に驚いていた。
何もないといいのにとさっきまで思っていたのに。
明日はロンドンを発ちワイト島へ向かう。
「自分のギターはどうしたんだろう?このままレスポールを島へ持って行っちゃうよ~~!」
そう心の中で叫んだ。

そして次の日の朝、マークはとうとうその言葉通りにレスポールとワイト島へ向かった。


なお、このお話はがあわいこの作家名で「小説家になろう」でも同時連載中です。
他の作品は作者名をクリックすると読めますのでよろしかったらどうぞ。


【拍手をありがとうございます】
茨木月季さん
ツイッターでもお世話になっています。
そうですね~、ツイッターは最近、妙に「重い」時がありますね。
しょっちゅう「くじら」に会っている気がします(苦笑)
いろいろヘンなことはたぶんサーバー側の問題だと思います。