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「ようし、みんな出発の時間だ」
マークたちに声をかけてきたのは、ワイト島フェスの主宰者だったオーウェンだ

「ありゃ、あんたがなぜここに?」と不思議がるマークにオーウェンは
「君たちのマネージャーを仰せつかってね。君の入院中に。」とこともなげに応える。

「げっ、聞いてないぜ」
「メンバー3人のうち2人が賛成した。多数決さ。」
オーウェンが丸縁のサングラスを左手の中指で押し上げながら言った。

「行こうぜ、マーク。ツアーの始まりだ」
ユウキもジョウもいつの間にか旅支度を整えていた。
「はぁ・・(このレスポールはどうするんだ?まだ身体から離れないんだ)」

躊躇するマークに
「RSバンドの前座だ。文句はあるまい」とマネージャーは鼻をふくらませる。
「RSバンドってもしかしてこの前ハイドパークで乱闘した・・?」
「おいっ、それを言っちゃいかん。伝説のバンドなんだからな。」

「しかしなんでまたその伝説のバンドが俺たちを前座にしてくれたんだい?」
「メンバーのビルとチャーリーがお忍びでワイト島に来ていたんだ。で・・」

「ヒヤッホー!それで俺たちの演奏を聴いて感激してくれたんだな」
マークは腕から離れないレスポールをギュイーンと鳴らした

「いや、火を吹くマーシャルを見てアレが気に入ったと・・」
「・・そっちかい・・」

「スケジュールはとりあえず国内ツアーの2週間だ。いいな、RSバンドは取り巻きの女の子もやたら多いぞ。決してトラブルを起こすことのないように」
「A-ha!」
マークはこの世の中で一番便利な返事をして用意されたツアーバスに乗り込んだ。

するとすぐ目の前でフラッシュがたかれた。
腕を顔の前でXの字に交差させてその光をよけようとしたマークだったが、
「もう一枚いただきます」
という声にそちらを振り向くと、あの女性記者のリリーがにっこり笑って立っていた。
「あれ、君も一緒か?」
「そうよ、マーク。世界の果てまであなたたちを取材するの」
「それってニューロックマガジンに載るのかい?」
「編集長次第よ」
まっすぐに切りそろえられた前髪の奥でリリーの大きな瞳がキラリと光った。

(つづく)



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>「ニッポン放送 ポップス・ベストテン 1973年9月9日付け」に拍手をありがとうございました

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